ココア
切ない二人の抱擁。
私の腕の中の西原くんは、亡くしてしまった愛しい人を思い泣いている。
そんな、彼が本当に愛しい。
決して彼の想いは、私に向かないことを理解する。
それでも、この手は離せない。
離せないの─。
「似てる…」
「─え?」
「似て…るんだ。倉野と──、陽子」
悲しいのか、嬉しいのか、分からない。
ただ、胸だけが痛い。
「性格とか見た目とか、全然違うのに、な」
そう言って、私の背中に回した手に、ぎゅぅっと力を込める。
強く、強く、西原くんに引き寄せられて─。
私の心臓は、どんどん鼓動を早め、ますます胸を苦しくさせる。
お互いの顔が触れるほど近くにあるのに、
私たちは、きっと永遠にキスさえ出来ない。