ココア



西原くんの唇が、耳のすぐそばにあって。

彼の吐息さえ、感じられる距離にいるのに。


“陽子に似てる”

なんて─、私にとって一番残酷な言葉。



でも、私は守ると決めた。


一度決めたこと、私は誰にだって誓える。




小さな溜め息と同時に、西原くんの手が私の背中から離れた。





「後悔、って苦しいな。こんなに苦しいものだったんだな」

「─そうだね」

「病室に行って、動かない陽子を見てさ。
吐き気を覚えるほどの苦しい後悔が、一気に押し寄せてきた」

「─うん」

「でも、それは俺が一生背負っていかなきゃいけないんだよな」

「………」

言葉が見つからない。

それほどの後悔を抱えて生きている人に、なんて声をかければいいのだろう。


守ると決めたばかりなのに、私という人間はあまりにも小さすぎた。





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