ココア



何も出来ない。

何の言葉もかけてあげられない。

こうして、そばにいることしか─。



「陽子のノートに書いてあった言葉が、頭から離れない」

「ノート?」

「入院してから、ペンが持てなくなるまでずっと陽子が毎日書いてたノートがあるんだ」

「うん」

「最初の頃は強気な言葉ばかり並んでた。
でも、だんだんと弱っていくのが分かるんだ。
…俺に対して謝ったりする言葉もあった。
謝るのは俺の方なのに」


落ち着いていた彼の肩が、また小刻みに震え出す。



「一番最後のページ…。
かろうじて読めるくらい文字は震えてた。
そこに、、、

“元気になりたい、また元気になりたい”

……って………っ」



彼の大粒の涙が、音を立てて床に零れ落ちた。





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