ココア
鏡の中の私は、ただ困った顔をするだけで、質問には答えてくれない。
そして、私は無意識のうちにケータイを開いていた。
画面に映し出される着信履歴のあの文字。
私にとって、大切な名前。
【西原くん】
画面にそっと指で触れてみる。
そこからは何にも伝わらないけれど、それでも彼が残してくれた着歴を確かめたかった。
ううん、私が確かめたいのは西原くんの存在。
私の中で、彼はまだ23歳のまま。
あれから、もう3年も過ぎているけど、私の中で笑う彼は23歳のままで、今の彼を知ることが出来ない。
あと、どれくらいで帰ってくるんだろう…?
「西原くん‥‥‥、会いたいな」
直接言えない想いが、言葉となって零れ落ちていた。