ココア
弱っている西原くんには、ナニカ理由があった方が安心するのかもしれない。
何の根拠もない理由だとしても、私はあなたを守るって決めてしまったけれど。
「ネパールでも陽子のことが頭から離れなくて。ほんと、コッチで野垂れ死んでもいいと思ったくらいでさ。
でも…」
「でも?」
「具合悪くなって、お前に電話して─。
久しぶりに聞いた日本語、久しぶりに聞いた知ってる奴の声。
その時、無性に帰りたくなったんだ、日本に」
「そう、なの?」
「いい年したオトナの男がさ、ホームシックっつーのかな。帰りたくなったんだ」
ははは、と乾いた声で笑ってココアを啜る。
そんな西原くんを見つめていると、切なくて暖かい感情が溢れてくる。
私が西原くんのホームシックの一因になれて、、、
泣きたいほど嬉しくなった。