ココア
キュッと自分の手を握り、西原くんと向き合った。
「いいと思う」
「え?」
「陽子さんのこと、好きでいていいと思う」
「………」
真っ直ぐな目で私を見る。
それは、どこか頼りなげで儚い。
「忘れられなくて当たり前だと思う。
無理に忘れる必要なんかないよ。
西原くんの中で、そっと大事にしてあげて」
「いい、のかな?それでも」
それでも不安気な顔で、そう聞いた。
「うん、いいんだよ。
大丈夫。そのままの気持ち大事にしていいんだよ」
「…ありがと、倉野」
安心したように笑った彼の目から、涙が流れ落ちた。