ココア
「だからココアには何も入れない方がいいんだって」
声も顔も、穏やかになっている西原くんが笑っていた。
「いーの。この方が好きなんだもん」
「子供かよ」
そう言ってまた笑う。
子供でいいよ。
西原くんが笑える要素になるんなら、子供だっておばあちゃんだっていい。
男になったっていい。
あ、それはちょっと困るかもしれないけど。
「話せて良かったよ」
「うん」
「ずっと苦しかったんだ、誰にも言えないからさ。
そういう性分だから、俺」
「そっか」
それは寂しい…?
寂しくないの、かな。
「陽子が心配してたっけな」
「何を?」
「俺に親友がいないこと」
「……。」
諦めたような顔で笑う西原くんは、少し寂しそうに見えた。