ココア
「じゃ、そうさせてもらうかな」
そう言って、西原くんは鍵を受け取った。
「寒くない?ごめんね、それしかなくて」
「寒くないよ、平気」
ベッドの下にもう一組布団を敷いて、そこに西原くんに寝てもらうことにした。
予備の布団は元々あまり使わなくて、今の寒さじゃちょっと心許ない気がするけれど。
西原くんは“へーき”と言って、布団に潜り込んだ。
二人きりの夜。
急に意識してしまう。
だけど。
私たちは“親友”だと、今さっき口にしたばかりだ。
「倉野」
「ぁ、はいっ」
そんなことを考えていて、ふいに名前を呼ばれて、声が裏返った。
「はは、なんだ、その返事」
「急に呼ばれたからだよっ」
この早まる鼓動を、気づかれないようにしなくちゃいけない。