ココア



気づかれないように、
明るい声を出す。

切ない演技。


「悪いな、急に来ちゃって。しかも、こんな重い話で」

「ううん、気にしてないよ。西原くんだって、私のこと助けてくれたでしょ」

「ん?ああ、親父さんの話か」


─それだけじゃないよ

 15歳の春、四つ葉のクローバーを貰ってからずっと、だよ


「あれはさ、話聞いただけだし」

「海に連れてってくれたじゃん」

「悩みがあったみたいだったからさ。
俺、悩むといつも、あの海眺めに行くから」

「話聞いてくれて、泣かせてもらったし」

「溜め込んでるのって辛いだろ?」

「西原くんだって溜め込むくせに」

「だから、今日来たんじゃん」


【だから今日来た】

その言葉を飲み込むと、ほろ苦い気持ちが広がった。



“切ない演技”を続けていれば、いつかそれは“本当”になって─

私たちは【本当の親友】になれるのだろうか





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