ココア
それが、私にとっての幸せになるのかは分からないけれど。
今は切ない想いを飲み込むことしか出来ない。
「倉野には後悔して欲しくないんだよ」
「え?」
「自分の大切な人が生きてるのってさ、それだけで奇跡なんだよ」
「─うん」
「大切な人の死を前に逃げた俺だから、分かることもある。
親父さんと向き合える日を信じろ。
辛いかもしれないけど」
「──うん」
「前も言ったけど、行きにくかったら付き合うからさ」
「…ありがとう」
西原くんの言葉が、私の胸に染み込んでゆく。
私もお父さんからずっと逃げてた。
それを受け止める時期なのかもしれない。
「介護の仕事を選んだのって、やっぱり…」
「そ、単純な理由だろ?」
「理由だけが大事な訳じゃないよ。西原くんはちゃんと行動してる。
だから、もうあんまり自分を責めないでね」
お互いがお互いを助け合う、優しい夜だった。