ココア
雨の公園で、西原くんにキツく抱き締められた感触がふいに蘇る。
トクトクトクと心臓の音が早くなる。
濡れたパーカーから伝わってきた彼の体温。
すぐ耳元で聞こえた彼の息づかい。
おでこを寄せた彼の肩。
私の背中に回された腕。
そのどれもが、私を掴んで離さない。
彼の体温を何度も感じても、私たちはキスさえもしないだろう。
それは私が決めたことだけれど。
苦しさを飲み込む夜を、きっと何度も迎えるだろう。
それでも、いい。
それでもいいの。
彼が頼れる私でいたいの。
『人に頼ることが出来ない』
そう言った彼の親友になりたいの。
彼の初めての親友になりたいの。
なりたいの、西原くん。