ココア
心の距離
目覚まし用にしているケータイのアラームが鳴り出し、慌てて止める。
そっと西原くんを覗くと、気持ち良さそうに寝息を立てていた。
思わず頬が緩む。
良かった、ぐっすり眠れてるみたい
そーっと起きて、なるべく静かに支度をして家を出た。
ピリッとした朝の冷たい空気が肌を刺す。
吐き出した息は白く空中に散った。
西原くんと過ごした夜。
それは
苦しくて
優しくて
切なくて
人生で一番、暖かい夜だった。
彼との夜を体全部に吸収するように、目を閉じていた。
きゅうっと痛む心はなかなかおさまらなかったけれど─。
気を抜くと、仕事中でもあくびが出てしまう一日だった。
殆ど眠れてないのだから当たり前かもしれないけれど。
そんな大あくびを佐久間さんに見つかっては注意される、という一日をやっと終え家に帰った。