ココア
「よし、飲んだな。あとは寝てろ。お粥作ったら起こすから」
「…ん。ありがと」
熱のせいか、素直に甘える言葉が零れる。
毛布を鼻までグッと引っ張って、目を閉じる。
ガスレンジの音や水の音がぼんやりと聞こえてくる。
自分以外の誰かが、自分の為にご飯を用意してくれることって、きっとすごく幸せだ。
40℃近い熱なのに、不思議な幸福感が私を包んでいた。
「…の。倉野」
優しく低い声で、眠りから目覚める。
体の節々が痛い。
インフルエンザの症状の一つだ。
「あし、が…痛い」
思わず、声に出していた。
「お粥、食べられる?」
「…今は、いい」
「少しでも食べてから薬飲んだ方がいいよ。薬、ちゃんと飲まなきゃ。もう、夜だよ」
時間の感覚をすっかり失っていた私は、ただ西原くんの言葉に従って体を起こした。