ココア



11月の雨の多さが嘘みたいに、晴天の日が続いていた。



カラカラに乾いた空気は、寒さを伴って肌を刺す。


マフラーに顔を埋め、下を向きながら歩く私の目に、見慣れてるバイクが映った。



私のアパートのそば、西原君がバイクと共に立っていた。



「おーっ!」


私を見て、屈託のない笑顔で手招きをする。



この瞬間の、胸の痛みは‥‥‥

きっと、一生続く気がした。





「最近、忙しそうだからなかなか飲みにも誘えないし、来ちゃったよ」


そう言いながら、私より先に階段を上がっていく。



部屋に着くなりストーブの前を陣取り、ココアを要求する彼は、まるで子供みたいだ。



「ココア飲みたいな~、甘いやつ」



あんなに否定していたのに、あの日から彼は甘いココアを飲むようになったみたいだ。



何かが、あの雨の夜から変化したのだ。



私達も、大きく関係が変わった。





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