ココア
あの、雨の夜。
西原くんがもがき苦しんでいたことを、私の前で吐き出した夜。
【親友】なんて、コトバに括られる関係ともちょっと違う気がするけれど。
それでも、彼は“自分”を少しずつ。
少しずつだけど、私に見せてくれるようになった。
誰にでも優しい西原くんじゃない。
子供っぽくて、イジワルで、傷つきやすい素顔を私に見せてくる。
私も、それに応える。
笑ったり、
ツッコミあったり、
支え合ったり、
まるで恋人‥‥‥?
恋人のようだけど、親友。
間違わないようにしないといけない。
彼の心を、もうこれ以上深い闇に置き去りにしたくないから─。
「年が明けたらさ」
「ん?」
「帰ってみよっか。地元へ」
その言葉に、私はビクッと反応する。
マグカップを手で包みながら俯く私を見て、彼は精一杯の優しい声で諭す。