ココア
【謝ろう、な?】
西原くん、どうか力を貸して───
私は立ち上がり、テレビの電源を切ってお父さんと向かい合った。
「お父さん」
「何だ?また、何か不満があるのか?」
ギュッと膝の上の手を堅く握る。
「お父さん、ごめんなさい」
「何がだ?」
「この前のこと…」
「この前のことって何だ。もう一度言ってみろ」
─!!
体内に流れる血が一瞬で凍り付くような、お父さんの言葉。
もう一度、言うの?
言わなきゃならないの?
【親父さんを信じろ】
西原くんの手が、私の背中を支えてくれていた。
「お父さんの顔…、見たくないって言ったこと。
こんな家、嫌だって言ったこと。
それから……」
「それから?」
「‥‥‥‥‥‥さよなら、て言ったこと」