ココア
喉が震える。
震えて痛い。
きっと、震えて切れて、血が流れている。
見えないけれど、私の喉も、お父さんの喉も、
血が流れている。
早く手当をしなきゃ。
「それがお前の本心なんだろう?」
「こんな家、嫌だって思った…ことはある。でも──」
お父さんは、どこか壁の一点を見つめ、動かない。
「でも、さよなら、て──思ったことは─ない……」
「何を今更…」
「思ったことないよ、一度も。ねぇ、お父さん」
お父さんの顔は険しく、そして、悲しそうに歪んだ。
「帰れ」
「え?」