ココア
今日も、話してはくれなかったけれど─。
私を、大事に大事に育ててくれたお父さん。
だから、私もお父さんを大事にしていきたい。
きっと、少しずつ、良くなっていく。
そう、信じることに決めた。
そんな風に思えるようになったのは、西原くんのおかげ。
西原くんは、ずっと私を支え続けてくれている。
あの、15歳の春からずっと──。
この地方は、冬でも滅多に雪は降らない。
そんな私たちが住む街に、雪の予報が出た。
「今夜から明日にかけて積雪があるでしょう」
天気予報士が伝える予報に、少し嬉しくなってしまう。
単純に雪が好きだった。
あの、何もかもを真っ白に覆い尽くす雪が。
そんなことを軽く言ったら、雪国の人に怒られてしまうかもしれないけど。
佐久間さん達と飲みに行く予定だったのを延期にして、仕事が終わってすぐ家路を急ぐことになった。
みんなに、雪だから早く帰る、なんて言われてしまったから。
駅まで向かう途中に、ケータイが鳴り出した。