ココア



今日も、話してはくれなかったけれど─。


私を、大事に大事に育ててくれたお父さん。

だから、私もお父さんを大事にしていきたい。


きっと、少しずつ、良くなっていく。


そう、信じることに決めた。


そんな風に思えるようになったのは、西原くんのおかげ。


西原くんは、ずっと私を支え続けてくれている。


あの、15歳の春からずっと──。







この地方は、冬でも滅多に雪は降らない。

そんな私たちが住む街に、雪の予報が出た。


「今夜から明日にかけて積雪があるでしょう」

天気予報士が伝える予報に、少し嬉しくなってしまう。


単純に雪が好きだった。

あの、何もかもを真っ白に覆い尽くす雪が。

そんなことを軽く言ったら、雪国の人に怒られてしまうかもしれないけど。


佐久間さん達と飲みに行く予定だったのを延期にして、仕事が終わってすぐ家路を急ぐことになった。


みんなに、雪だから早く帰る、なんて言われてしまったから。


駅まで向かう途中に、ケータイが鳴り出した。



< 223 / 247 >

この作品をシェア

pagetop