ココア
【救われたんだ】
彼の声が、胸の奥に反響する。
「お前が“親友になる”って言ってくれて、俺…」
「──。」
「凄く凄く嬉しかった。
本当に救われたんだよ、倉野に」
悲しいのか、
切ないのか、
嬉しいのか、
何とも表現出来ない気持ちが、我慢出来ずにホロホロと流れ落ちる。
一つだけ分かる、確かな気持ち。
それは─【恋しい】
「もう、泣くなよ~」
そう言って、西原くんは困ったように笑う。
でも、西原くんの笑顔も泣いているようだった。
「倉野のおかげで、前に進めたんだ。この部屋を引っ越して、俺の人生をまた一歩、歩き出そうって思った」
「ぅ…ん」
「ちゃんと俺の中にいつも陽子がいる。それを忘れなければ、俺はこの部屋じゃなくても、どんな所でもやっていける気がする」
「ぅん、大丈夫。西原くんなら大丈夫だよ」
「引っ越す前に、大切な倉野に、大切な親友に、この部屋を…陽子が居た部屋を見ておいて欲しかったんだ」