ココア
『大切な倉野』
『大切な親友』
その言葉に救われながら、恋しさを捨てきることが出来ない。
でも─。
私の中の葛藤も苦しさも切なさも、全て飲み込もう。
そうして、私は西原くんの“大切な親友”でいよう。
この部屋で一人きりだった西原くんの手を、私はもう手放したくないのだから。
「ココア、もう一杯飲む?」
「うん、飲む。ありがとう」
ふ、と西原くんが私の顔をじっと見る。
「な、何?」
「やっぱり、大事に育てられたんだな、倉野」
「え、そう?」
「真っ直ぐだもんな、お前の“ありがとう”は」
「そうかな、普通だよ」
「それが大事なんだよ、きっと」
そう言うと、今度は優しい顔で笑った。