ココア
ウトウトしかけた頃、何かが動く気配がして目が覚めた。
体を起こしてみると、寝袋の中は空っぽになっている。
急にヒンヤリと冷たい風が、背中を通った。
窓が開いている。
そしてその向こう、ベランダに西原くんが立っていた。
西原くんの上に、大粒の雪が舞っている。
そんな中、何かを握り締め、肩を震わせて……泣いて、いる…?
声をかけていいのだろうか─。
そっと一人で泣かせてあげた方がいいのかもしれない。
立ちかけていた足を戻そうとした時、
―ギシッ
床を踏みしめる音が響いてしまった。
西原くんが振り向いて、少しバツが悪そうな笑顔を見せる。
「起こしちゃった?ごめん」
「ううん、いいよ」
窓ガラスを挟み、向かい合う。
なかなか言葉が出てこない。
ふ、と西原くんの手元に目をやると、彼が握り締めていたのは一冊のノートだった。