ココア



グラリ、

と揺れたのは体なのか心なのか、分からないほどの揺らぎが私に訪れる。



倒れ込んだ私の上に覆い被さるような格好の西原くん。


見つめ合う西原くんの目が、こんなにも近くにある。

息もかかるほどの距離に、私は動けなくなってしまった。



真剣な真っ直ぐな目は、見つめているだけで感情が溢れてきてしまう。


しばらく見つめ合った後、彼は私の胸に顔を押しつける。


「ごめん、しばらくこうしてて」

顔を押しつけながら弱々しく呟く彼を、ただただ抱き締めた。


考える前に腕が西原くんを抱き締めていた。



泣いていいよ。

我慢しなくていいんだよ。


私に出来ることは、ほんとに少ししかないけれど。


あなたを抱き締める腕や胸は、いつでもここにあるから。



だから、安心して。

安心してね、西原くん。

泣いていいんだからね、いつだって─。




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