ココア



「泣くなって」

そう言って、彼は少し困ったように笑う。

「ご、ごめ…ん」

「あんまりお前を泣かせたくないんだよ」

「…ぅ…ん」

「倉野の、あのノーテンキな感じが好きなんだからさ」

「ぅ…褒められてない気がする」

「褒めてんだよ。俺、ネパールでそのノーテンキさに救われたんだからさ」

「…そう、なの?」

「そのノーテンキな声を聞いて、日本に帰りたくなったんだって」

「なるべく…泣かないようにする。たぶん。きっと。いや、うん。頑張る」

「ははは、どっちだよ」


「西原くんは泣いていいんだからね、我慢しないで泣いていいんだからね」

「ありがとう。こうして、後悔も涙も吐き出せるのは倉野だけだよ」

「西原くん…」


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