ココア
いつもとは違う、スーツ姿の西原くんに、ドキドキしてしまう。
スーツ姿に弱い女子、て結構多い、と思う。
「倉野、引っ越しの荷物、殆ど片付いたよ。また、遊びに来いよ」
「あ、うん。行く」
「へぇ、いつの間にあんた達。へぇ、そういう仲なんだ」
恵美がからかい口調でつっこむ。
「葛城、男と女でそういう関係しか考えられないなんて、寂しい奴だなぁ。な?倉野」
「あ、うん。そーだよ、メグ。寂しい奴だな~」
終始、私たちのペースで進む会話に、内田菜々子はイラっとした顔を見せた。
「ねぇ、直くん。この人が倉野さん?」
会話の隙間に、すぐさま割り込んできた。
「そ。この人が倉野さん。そして、こちらが葛城さん。高校からの友達なんだ」
恵美も紹介したのに、彼女は私の顔しか見ていないようだった。
「倉野さんの話、良く聞いてて。だから、会ってみたかったんです」
「そう、なんだ」
言葉に棘を含んでいそうな顔で、彼女は私を見ていた。