ココア
「ね。直くん。倉野さんて彼女?」
「倉野は友達だよ、ト·モ·ダ·チ」
この子の前で“友達”と言われるのは嫌─
嫌だ─!
そんな気持ちが顔に表れそうで、情けなくて。
ただ、弱々しい愛想笑いをするしかなかった。
「菜々、そろそろ帰った方がいいんじゃね?」
菜々─!?
名前の呼び捨て、なんだ
そんな些細なことが、私の胸を刺す。
気になって、苦しくて
私の顔は、今きっと醜いに違いない。
「そんな追い出すような言い方しなくても~。まぁ、倉野さんにも会えたし、帰ろうかな」
この子の言動、すべてが気に障る。
体が反射的に身構えてしまう。
内田菜々子は、西原くんのことが好きだ。
誰に聞いたわけでもなくたって、私はそう確信出来る。
そして、内田菜々子も私の気持ちに気付いたはず。
なんだか、いたたまれなくて、この場から走って逃げ出したかった。