ココア
内田菜々子が帰った後、私もすぐに店を出た。
大事な用事がある、なんてわざとらしい嘘をついて。
残った店で、恵美と西原くんがどんな会話をしていたかは、私には知る由もなかった。
「ねぇ、西原。今日なんであの子連れてきたの?」
「俺もダメだって言ったんだけどさ。顔だけ出したら帰る、だからどうしても連れてって、て言うから」
「それでも、連れてくるなんて。なんかヤダなぁ」
「悪かったよ、雰囲気壊して」
「同僚なんだっけ?」
「まぁ、俺より半年先輩だけど。年は俺より4つ下のね」
「4つ。22歳なんだ、若いね」
「そう?大して変わんなくない?」
「女はそういうの、気にするんだよ」
「そういうもんかねぇ」
「ねぇ、あんた、彼女作らないの?」
「倉野からちょっとは聞いてんだろ?そんな気持ちにはなれないんだよ」
「麻梨のことは?」
「はぁ?」