ココア
私の中で、何かが焦り出した。
その焦りの原因は、彼女、内田菜々子。
今まで、西原くんの一番近くにいる人間は私、という小さな自信があった。
でも、そんな小さな自信は、彼女の出現であっという間に崩れた。
小さくてふわふわで、いかにも女の子、て感じの彼女。
どう逆立ちしたって勝てっこない。
そんな彼女の存在が、私を焦燥感の塊にさせた。
そして、そんな私の焦燥感を、更に増す出来事が起こった。
「お。倉野。ちょっとさ、聞いて欲しいことがあって」
電話口の西原くんにそう切り出され、なぜか彼女の顔が浮かぶ。
─イヤな予感
「何?」
「この前の同窓会に来た職場の同僚、覚えてる?」
「え、あ、ああ。うん。何となくね」
─嘘
何となく、なんかじゃない。
ハッキリと覚えている。