ココア
「内田っていうんだけど。その子から、コクられてさ」
心の大事なところをグッと掴まれたような、緊張した痛みが走る。
「へぇ、そうなんだ。けっこう可愛い子だったよね」
「可愛いかどうかは分かんないけど。なんか、こういうこと久しぶりで戸惑っちゃってさ」
戸惑ってるのは確かだろうけど、そこからは困った感じは伝わってこない。
きっと、西原くんも満更ではないんだろう。
彼が今、どういう顔をしてるか想像すると、心の痛みは更に増した。
「俺、今、誰とも付き合う気はないしさ。参っちゃうよな」
全然参ってないような声で言う。
「じゃぁ、そう言えばいいのに」
「言ったんだけどね」
「西原くんだって、イヤじゃないんでしょ」
私の言葉に、トゲが含まれてゆく。
今は彼に気付かれなくても、きっとこのトゲが大きくなって、いつかバレてしまう。
そんな気がしてならなかった。