ココア
「…あの、…どうして一緒に探してくれたの?」
そう聞くと、少し何か考えてるような間を作り、そしてまた笑顔になって私の手の中の小さな四つ葉を指さした。
「言ったじゃん」
そのあまりに無邪気な笑顔に、何も答えられなくなってしまう。
「また、学校でね」
そう言うと、制服を何度かはたき、軽く走るようにして行ってしまった。
後ろ姿が見えなくなってしまっても、そこに立ち尽くして見つめる。
彼はもうそこにはいないけど、彼の存在を確かめるように私の中の記憶を見つめる。
どうして一緒に探してくれたのか、結局答えてくれなかった。
名前さえ知らない。
だけど、私が前に進むための“大切なキッカケ”をくれた人。
掌の中の小さな四つ葉のクローバーを、陽に翳してみる。
「…また、会えるかな」
気がつくと、声に出して呟いていた。