ココア



クローバーと共に、彼の存在が私の励みだった。


時々見かけるだけで、胸は小さく鳴き、顔に熱が集まってゆく気がする。


それだけで。

彼の姿を見つけるだけで、私の日々はどんどん色付いた。



そして、2年になった。


クラス替えでも、恵美と一緒になり、新しい教室に入ると、何人かが恵美の回りに集まる。


その中に、彼がいた。

心臓の音が外まで聞こえるんじゃないか、てくらいドキドキしている。


「葛城!何だよ~、おんなじクラスかよ」


「げーっ、西原と一緒なの~?ツイてないなぁ」


ニシハラ、くんて言うんだ、あの人


体が勝手に固まる。


恵美が私の方を振り向いて、みんなに紹介してくれた。


「あ、この子、倉野麻梨。麻梨、こいつら、中学からの仲間なの」


「俺、西原直樹。倉野さん、よろしくね」


まるで、初めて会ったみたいに挨拶をする西原くん。


─やっぱり、覚えてないよね─





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