ココア



本当は言いたかった。


今も大切に持っている、四つ葉のクローバーを見せたかった。



“西原くんのおかげで、前に進めたんだよ”

…って。


“初めて会ったあの日から、西原くんが好きだったんだよ”

…って。


でも、言えないまま。



そうして、時が過ぎる。


みんなそれぞれに、同じ時間が過ぎる。


それなのに─。


オトナと言われる年になった今も、私はちっとも変わってないのかもしれない。


不安や焦り、自己嫌悪で潰されそうな時。

彼の存在が、あの時の彼の掌が、ずっと私を支え続けてくれていた。



そう。

26歳になる今も─。




< 30 / 247 >

この作品をシェア

pagetop