ココア
深い意味はないのかもしれない。
いや、ないんだと思う。
そう頭では分かっていながら、体は正直で鼓動はいつもより早く刻む。
自分の小さな手を胸にあてて、緊張を飲み込んだ。
「珍しいね。てか、二人で飲むのなんて初めてじゃない?」
「そう?ま、たまにはいんじゃね?」
何とも思ってない感が伝わるような彼の返事。
慌てているのは私だけで、少し悔しい気もするけれど。
それでも、私の顔は、もうすでに笑顔がこぼれていた。
「今日は?」
「…! き、今日はちょっと仕事で遅くなりそう…かも」
─仕事が遅くなるなんて嘘。
今日なんて、いきなり過ぎる。
適当な服だし、靴だって今日のは─。
頭の中で、グルグルといろんなことがスゴい勢いで巡っていく。