ココア
「倉野‥‥、幸せになれよな」
そう言った西原くんの目が優しくて。
泣きたくなるくらい優しくて。
西原くんは私の気持ちに気付いていたんじゃないか、、、そう思えた。
「うん。幸せに、なるよ」
「よしっ!イイコだ」
私の大好きな彼のキレイな手が、私の頭を乱暴に撫でる。
その感触がキツく胸を締め付けた。
諦めた筈の想いが、彼の優しさにしがみつきそうになる。
でも‥。
私は彼には想いを伝えない。
伝えたら、こんな優しい時間さえ、なくなってしまうかもしれないもの。
そんなのは──イヤ
「結婚式には呼べよ」
「西原くんもね」
「ああ。」
その日の笑顔を最後に、彼には会っていなかった。
だから、私の中の西原くんは23歳のまま─なのだ。