ココア
友達と会うのにしては、気合いが入ったカッコに見えたかもしれない。
ヒールも今日、おろしたばかりのだし。
でも、佐久間さんはそれ以上ツッコんで聞いてこなかった。
「今日も一日、頑張ろうね」
いつもの優しい笑顔でそう言って、私の肩を軽く叩いた。
【大事な約束がある日に限って、仕事が忙しい】
これって、“社会人あるある”じゃないのかな、なんて眉間に皺寄せながら思った。
17時半上がりだったのに、18時をとっくに過ぎている。
動かす手よりも、頭の方が焦っていて余計、空回りしていた。
タイムカードを押して、やっと職場から出たのが19時。
待ち合わせは19時半。
『少し遅れるかも、ごめんなさい』
そう西原くんにメールして、駅に向かって走り出した。