ココア
「へー、落ち着いたイイ感じの店だな」
私は、恵美とのお気に入りの居酒屋に西原くんを連れていった。
彼を連れてきたい、て思ってた場所の一つだった。
二人掛けのベンチシートに座る。
肘が触れ合うくらいの距離で、私はまるで初めての恋のように固まっていた。
そして、それを悟られまいと振る舞う自分が、何だか滑稽な気がしてくる。
隣に座る西原くんは、ずっとオトナっぽい雰囲気になっていた。
白い肌は日焼けしていて、華奢な細い体は少し逞しくなっていた。
幼さが残っていた顔も、今はグッと引き締まって見える。
骨っぽい日焼けした腕に、“オトコ”っぽさが漂う。
もう、【男の子】ではなく【男の人】て感じだ。
それに比べると私はずっと幼い。
履き慣れないヒールが全然似合ってないし。
─それに、デコっぱちだし
釣り合わない気がして、何だかいたたまれない気持ちに縮こまりそうだった。