ココア
「相変わらずビール党なんだな。オッサンかよ」
「自分だってそうじゃん。いーの!ビール好きなんだもん」
「おまえが甘いカクテルとか飲んでんの見たことないもんな」
子供のように言い合いながら、運ばれてきた中ジョッキを二人でガチンと合わせた。
「倉野、変わってねえな。相変わらずノンビリ生きてんだろ」
「西原くんは、ちょっと雰囲気変わった気がするなぁ。でも元気そうで良かった。仕事は?」
「──辞めた」
少しの間をおいて、サラリと答えた。
「え、辞めたの?」
確か、鉄道関係の整備の仕事だった筈だ。
大変だけど、仕事楽しいって言ってたのに。
「自分の人生を見つめ直してさ。今、やっておきたいことをやらないと後悔すると思ったんだ」
深い“何か”を含んでいそうな、彼の言葉だった。