ココア
その言葉の響きや雰囲気に、それ以上聞くことが出来なくなる。
重くなりそうな空気を、彼自身が軽く破った。
「お前さ、バックパッカーって知ってる?」
「言葉は聞いたことあるけど」
「まぁ、簡単に言うとバックパック一つで安価な旅をすることなんだけどね。俺さ、仕事辞めて、3ヶ月間バックパッカーしてたんだ」
「3ヶ月も?一人で?」
「ああ、ネパール行ったんだけど全然言葉分かんないし、大変なんだけどさ。なんかそこにはパワーが溢れてるっつうかさ」
西原くんは楽しそうに喋り続けた。
「日本人宿とかあって、同じ日本人の人とかもいるし、もちろんいろんな国からも来てて。そこで一番仲良くなったのはドイツの人なんだけどね」
ほら、と言って、その人と写った写真を見せてくれた。
その写真の中で、西原くんは、見たことないとても逞しい顔で笑っていて。
そこからは、彼の“強さ”みたいな色が溢れていた。