ココア
彼の目が真っ直ぐ過ぎて、きっとそこには何の意図もないんだろうって分かる。
けど、でも。
私の中の切なさが、急速に膨れ上がる。
「お前の、のほほんとした声聞いたらさ力が抜けて」
「もー、のほほんなんてしてないよ~」
いつもよりずっと早い心臓の音が伝わってしまわないように、出来るだけ自然に笑ってみるけど…。
うまく出来てるか自信ない。
「ほら、その感じだよ。ほんと、脱力モンだって」
そう言って、子供のような笑顔から一転、真面目な顔になる。
「俺、寂しかったのかなぁ。お前の声に癒されたんだ。スゴく」
思わず小さく唇を噛んだ。
じゃないと、泣いてしまいそうだったから。
「‥‥ありがとな、電話に出てくれて」
西原くんはそう言った後、照れ隠しのようにジョッキに残ったビールを飲み干した。
─あ‥‥‥また、だ─
こんなに大勢の人がいるのに、二人だけ時間が止まってるような感覚が私を包んでいた。