ココア
いつも相手の目を真っ直ぐ見て話す彼が、下を向いて噛みしめるように話すから
自分自身を諭すように話すから
そんな西原くんを見るのが何だか痛くて、ただ、頷くことしか出来なかった。
これ以上、この話しは出来ない。
聞けない。
私の奥がそう言っている。
「あのさ、もう一つ聞いていい?」
「ん?」
話題を逸らす意味も込めて聞いた。
「どうして、今回誘ってくれたのかなぁ、って。だって、二人で飲むの初めてだよね」
視線を一度上に上げ、それからまた私を真っ直ぐに見る。
「んー、なんとなく」
「なんとなく?」
「友達と会うのに理由なんかいらないだろ?」
「え、あ、うん」
「お前とサシで飲みたかった、てので、いいじゃん」
子供のような笑顔でそう言うと、私の頭をポンポンと軽く叩く。
その笑顔に、行為に、胸がまた、きゅぅっと痛くなった。