ココア



たくさん話して、たくさん飲んで。


いつもあっという間過ぎてしまう楽しい時間。



「お、そろそろ帰るか」


彼の一言で、私達は店を出た。



─!! っつ─


足に痛みを感じる。

たぶん、靴擦れ。

履き慣れないヒールだし、ずっと走ってきたからかな


足を庇うように歩いていたのか、自然に顔に出ていたのか、西原くんに気づかれた。


「どうした?」


「たぶん、靴擦れだと思う」


「どれ、見せてみ?」


「え、いいよ。大丈夫だから」


「いいから見せてみって」


慌てる私をコンクリの花壇のふちに座らせた。

ヒールを脱いでみる。


何故か、妙にドキドキしてしまう。



「ああ、痛いだろ?これ」


踵の上と親指の付け根辺りに見事に出来ている靴擦れを見て、西原くんはそう言った。


「大丈夫だよ、これくらい」


西原くんが心配するから、早足で何でもない風を装い歩き出す。



その時、靴擦れよりずっと強い痛みが走った。


─!!!

「っっ痛──!」





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