ココア



西原くんの優しさ。

それは例えば

【喉が渇いたから水を飲む】

そんな風に、ごく自然の、ごく普通のことなんだろう。


誰かに特別、て訳じゃなく。


勿論、“特別な誰か”はいるだろうけれど。


それは抜きにして、誰にでも自然に優しく出来る人。


分かって、る。


それは理解しているつもりだった。


でも─。

“私だけ特別な訳じゃない”

そう思おうとしても、彼の背中の温かさは私を掴んで離さない。


華奢だと思っていた西原くんの背中は、私の想像よりずっと逞しく、ずっと広く。

そして、ずっとずっと温かかった。


そのことを知ってしまった今は、以前よりずっと苦しさを増す。


苦しさが増しても─

それでも、知ることが出来て幸せだと、心の底から思う。



密着している体から、私の早い鼓動が伝わってしまったらどうしよう。


でも、彼ならきっと気付かないフリをするんだろうけれど。




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