ココア
すれ違う人が私たちを見るけれど。
そんなことが気にならないほどに西原くんの背中は心地良い。
優しくて、暖かくて
そして、なんだか泣きそうになるくらいに。
駅前まで私をおぶってくれて、タクシー乗り場から二人でタクシーに乗った。
運転手さんに私の家の方面の住所を告げると、シートに凭れ掛かる。
「あ、俺さ、しばらくプーかもしれないから、いつでも誘ってくれよな」
「そっか、就活中なんだっけ。うん。じゃぁ、遠慮なく」
「遠慮なく、て言われると怖いな。3ヶ月の旅の果てで、俺、金ないぞ」
て、優しく笑う。
「んん。ちょっと、寝ていい?」
そう言って、西原くんはシートに凭れたまま目を閉じた。
車の振動が心地良く、思わず私も目を瞑りそうになる。
ふっ、と右肩にかかる重さに目をやると、西原くんの顔がすぐそばにあった。
─ドクン─
私の中の熱が跳ね上がった。