ココア
タクシーは、アパートの近くのコンビニの前で停めてもらった。
「ここで平気か?肩、貸すぞ?」
「ううん、大丈夫。すぐそこだし」
「家に帰ったら足、冷やせよ。湿布とかある?買ってく?」
「多分、あると思うよ。大丈夫」
西原くんが心配しないように、そう言って笑ってみせる。
「じゃ、またな」
「うん。またね」
タクシーが走り出した後も、しばらくそこに立って遠ざかるテールランプを見ていた。
“またな”
西原くんの声が私を満たす。
また、か
また会えるんだよね
前より、ずっとずっと彼との距離が近づいた気がして、自然に笑顔が零れていた。
歩くと感じる痛みは、西原くんの背中の優しさを思い出させて。
痛いのに、なぜか笑ってしまう自分に、また苦笑いをした。