ココア
佐久間さんのあんな目を見てしまって、私は動揺していた。
その目の理由を、私は本当は気付いている。
二人だけになった冷蔵室は、いつにない気まずい空気が流れていた。
冷蔵庫の低いモーター音が耳障りに感じるほど。
「倉野さん、たまには飲み行かない?」
いつもの佐久間さんだけど、その奥には切なさを隠しているのだと思ってしまう。
「最近、付き合い悪いんだもんな、倉野さん」
冗談めかしていう口調が、チクリと胸を刺す。
確かに、ずいぶん佐久間さんとは飲みに行っってない。
西原くんから電話がかかってきた日からずっと、だ。
前は良く行っていたのに。
いろんな話聞いてもらっていたのに。
私の中の西原くんへの想いが、佐久間さんに遠慮を感じ始めているのかもしれなかった。
「そうですよね。最近付き合い悪過ぎですよね。じゃぁ、その埋め合わせってことで、今日どうですか?」
精一杯、普段通りに笑って言った。