ココア
私は知っていた。
佐久間さんの優しさを。
そして、その特別な優しさを私に向けてくれていることを。
いつも、いつも、見守ってくれていたことを。
ずっとずっと気づいていた。
それなのに、気づかないフリをしていたのかもしれない。
佐久間さんの優しさが、笑顔が嬉しくて─。
私の方がずっと情けなくて、サイテー、だ。
自己嫌悪に潰されそうになりながらも次の日出勤した。
品出しの準備をしていると、同僚の萌(もえ)が声をかけてきた。
「ね、ね、ね。昨日さ、あの後、佐久間さんと二人で飲んだんでしょ」
「う、…うん」
萌は、私と佐久間さんの中を怪しんでる。
“佐久間さんは絶対に麻梨のことが好きだ”て、ことあるこどに言ってきた。
「何、その“間”は~。やっぱ、なんかあったんでしょ」
「…ない、よ。なんもない」
「ウソ―、だって今日、佐久間さんめちゃくちゃテンション高いよ」
そのことを聞いて、心がズキリと痛んだ。