ココア
その時、佐久間さんが萌に声をかけに来た。
「小島さん、この伝票なんだけどさ」
「あれ?私、なんかやらかしました?」
萌の隣に私がいるのを見つけると、佐久間さんは戸惑いの表情を浮かべた。
でも、それはほんの一瞬で、すぐにいつもの笑顔に戻ると、萌と伝票を確認し始める。
「じゃ、よろしくね。倉野さん、小島さんがサボらないように見張っといて」
「あ、ヒド―い。佐久間さん、麻梨にだけ優しいんだもんな」
「倉野さん、真面目だから」
ね、と私にいつもの笑顔で笑いかけ、佐久間さんは行ってしまった。
「なんか、目と目で語り合ってなかった?」
「そんなことないよ。ホラ、仕事戻るよ」
なおもからかいたがる萌を振り切るように、売場へと戻った。
「そこ、座っていい?」
社員食堂で休憩をしていると、声をかけられた。
顔を上げる。
佐久間さん、だった。