ココア
無意識のうちに身構えてしまった私に苦笑いを浮かべ、私の前に座った。
二人の間には、いつもよりずっと温度が低い、重い空気が流れているようだった。
その重く低い空気を断ち切るように、佐久間さんが口を開いた。
「ね、麻梨ちゃん」
ドキッとする。
職場で“麻梨ちゃん”なんて呼ばれたことないから。
「─はい」
思い切り緊張した声を出す私に、顔を優しく崩す。
「なに、緊張してんだか」
ククク、と笑いをこらえながら話し始めた。
「いつもの麻梨ちゃんでいて。俺もいつもの俺でいるから」
「佐久間さん…」
「麻梨ちゃんは、ずっと俺のカワイイ妹なんだからさ。これからも、何でも相談しろよ。恋の相談も、な」
「──うん」
「いつでも、どんなことも聞くからさ」
いつもの優しい声と目で、佐久間さんはそう言ってくれた。