ココア
いつでも、どんなことも
それは、今までの私たちに戻れるような、そんな言葉。
佐久間さんの優しさが、胸にじんわりと広がる。
「ありがと。佐久間さん」
「じゃぁ、仲直り、な」
ケンカしてたわけじゃないんだけど、と言おうとして止めた。
佐久間さんの笑顔が、あまりにも優しいから。
コン、と音を立ててテーブルの上に缶コーヒーを置いてくれる。
二人の仲直りの印、だった。
「うわ、寒っ」
職場の通用口を出ると、10月末の冷たい風が吹き付けてくる。
薄着で来てしまったことを軽く後悔しながら、カバンからケータイを取り出した。
今まではそんなにケータイを気にしなかったのに、今ではほぼ習慣になっている。
あれ?留守電─?
伝言が残っていることを知らせる光が点滅していた。