ココア
その電話は、本当に突然だった。
「もしもし?」
駅前の雑踏の中歩いていた私は、突然鳴り出したケータイの通話ボタンを押した。
「もしもし?」
「お、おお!倉野、俺!」
登録されてない番号に不審に思ったけれど、聞き覚えのある声に、体がピクリと反応した。
「俺だって!西原直樹だよ、忘れたのか?」
…!!!
「西原くん!」
一気に暖かいような、切ないような、そんな気持ちが胸一杯に溢れ出す。
「久しぶりだな~、元気か?」
「ほんと、久しぶりだよね。3年ぶりくらいじゃない?私は元気、西原くんは?」
「まあ、元気だよ」
「そっか、良かった。ケータイの番号変わったんなら、教えてくれれば良かったのに」
「あ、ああ。いろいろあってさ…。ごめん」
西原くん、の声だ。
紛れもなく、私が大好きだった西原くんの声だった。