ココア



「麻梨もお父さんも落ち着いて。ね?」

お母さんが、やんわりと止めに入ったけれど。

お父さんの怒りは止まない。



「そうやって、お前ら二人で俺をバカにしてるんだろう!!」


「お母さんに怒鳴らないで!」


「麻梨、いいから。もう止めて」


被害妄想に取り憑かれ、お父さんがお父さん自身を苦しめる。


「ほら、二人でそうやって俺の悪口を言ってるんだ。俺を除け者にして!」


「違うって言ってるでしょ!!」


ダメ…

お父さんに怒鳴りたい訳じゃないの…


「お前は俺が嫌いなんだろ!!」



止めたかった。


私の中の黒い気持ちを。


なのに、出来なかった。



お父さんを傷つけたくないのに…


今のお父さんも、私の大事なお父さんなのに…



私の中に溜めていた黒いモヤモヤが、破裂してしまいそうだった。





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